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食品包装廃棄、リサイクルより再利用(リユース)を優先するのは誤りと報告

マクドナルド本社のEVP兼グローバル・チーフ・インパクト・オフィサーが、EUのPPWR提案...そして環境、経済、食品安全、消費者への影響を明らかにしたカーニーの報告書について語った。

 

<以下、日本語訳>

前回2月にマクドナルド本社の代理としてPPWR(食品包装・包装廃棄物に関するEUの提案)について話すためブリュッセルに行ったとき、私はPPWRとは何か、それが消費者、企業、そして環境にとって何を意味するのかを説明しなければならないことに気づきました。そして状況が変わりました。

 

前回、私はPPWRをめぐる議論を喚起したいと述べた。それは良いことだ。しかし、マクドナルドや、非公式の外食産業(IEO)のパートナーまた競合他社の多くにとって、現在のPPWRの提案が意図しない結果をもたらすことは、環境、経済、食の安全、更に消費者にとって悪いことだと、私たちは信じています。

 

端的に言えば、PPWRの広範な目的を達成するためには、食品包装ソリューションの組合わせが唯一の方法であると考えます。

 

私たちは、世界的な経営コンサルティング会社であるカーニー社の報告書『No Silver Bullet』による独自調査と、現在の市場経験に基づいてこのように考えています。簡単に言えば、PPWRの広範な目標を達成するためには、食品包装ソリューションの組合わせが唯一の方法であると考えています。マクドナルドでは、廃棄物を自然界に残さず、貴重な素材を使用するための解決の導入と加速を支援する旅をしています。このため、前回ブリュッセルに来てから数ヶ月間、私たちとサプライヤーは、PPWRが真正面から取り組もうとしている問題に対処できると私たちが信じる実践とイノベーションに投資する約束を続けてきました。

 

ヨーロッパのレストランで使用されている食品包装の大半は紙ベースで、ヨーロッパから調達しています。もうひとつの重要な戦略はリサイクルであり、そのために私たちは長年にわたってヨーロッパ全土でシステムを導入してきました。実際、今年初めから、ポーランドの355店舗がクローズド・ループの廃棄物管理システムで運営されている。


マクドナルド・ポーランドは、プラスチックラミネート紙コップなど、食品に汚染された紙包装を完全にリサイクルする独自技術の開発と導入について、紙リサイクル業者のMiklan-Ryzaと共同で取り組んでいます。2024年末までに、このプログラムをポーランドの全レストランの駐車場に拡大し、レストランの近くに捨てられた包装材も確実に回収してリサイクルする予定です。

 

重要な戦略は、使い捨ての化石燃料由来のバージン・プラスチックからの脱却です。

 

イタリアでは、Comieco(セルロース系包装材の回収とリサイクルのための全国コンソーシアム)と協力して、数年前から同様の官民統合型パートナーシップが運営されており、常に改善が図られています。これは、マクドナルドの包装が紙のリサイクルの流れに乗り、他の紙廃棄物とともに効果的にリサイクルされることを意味します。私たちはまた、もうひとつのパートナーであるAltroconsumo社とともに、日々の小さな選択によって大きな変化をもたらすことができることをお客様に伝えるため、全国的な啓発キャンペーンにも投資しています。


Comieco社は間もなく、マクドナルド・イタリアにおける当社の食品包装の回収率とリサイクル率の評価を発表する予定です。

 

何年もの間、マクドナルド、フランチャイズ加盟店、パートナー、そしてIEOセクターの競合他社は、紙繊維包装とリサイクルソリューションに革新的な投資を行ってきましたが、それはまた、EUの当初の包装・容器包装廃棄物指令以来、政策立案者が過去30年間成功裏に推進してきたことでもあります。しかし今、PPWRはそのすべてを投げ捨て、再利用を義務付けることによって、ヨーロッパにさらなるプラスチックを生み出す危険性をはらんでいます。そのプラスチックはそもそも欧州産でなく、プラスチックを排除し、既存のリサイクルインフラに投資し、消費者が正しい選択をできるようにする方が良いのではないでしょうか? ヨーロッパには既に充分なリサイクル能力もあります。

 

もう一度申し上げます。

プラスチックを排除し、既存のリサイクル・インフラに投資し、消費者が正しい選択ができるように支援する方が良いのではないでしょうか?

 

もちろん、何かを何度も再利用するという考えは明白な解決策のように思えますが、それほど単純ではありません。実際、「再利用可能」(リユース可能)という言葉そのものが誤解を招くと私は考えています。現実にはそうではなく、カーニーによれば、再利用可能なパッケージングが環境にプラスの影響を与えるには、50回から100回再利用される必要があります。再利用は経済の他のセクターにとっては適切な解決策かもしれませんが、私たちのレストランにおける現在の市場経験では、PPWRの結果、環境に重大な予期せぬ結果が生じることが示唆されています。例えば、オランダでは、1ユーロのデポジットで再利用可能な(リユース可能な)カップを提供し、サーチャージ付きの使い捨てカップも提供しています(法律で義務付けられています)。ドイツでは、リユース品を選ぶ客は2%未満で、1個につき2ユーロのデポジットがあるにもかかわらず、返却されるのは40%に過ぎません。つまり、同じコップは平均して2度も使われていないのです。再利用が、その意図する効果をはるかに下回っているこれら2つの実例があります。

 

フランスでは、ある種の食品包装はレストランでの飲食に限り再利用可能(リユース可能)であり、レストランから持ち出すことを意図していません。平均使用回数は29回未満で、カーニーの50~100回にはほど遠い。それは、かなりの数の客がレストランから持ち出したり、捨てているからです。

 

カーニーの報告書『No Silver Bullet』によれば、PPWRが義務付ける再利用可能な使用例は、ヨーロッパにおけるプラスチック材料の急激な増加につながるということを示唆しています。PPWRで提案されている再利用(リユース)の目標は、レストランでは4倍、テイクアウトでは16倍のプラスチック包装廃棄物を生み出すことになります。

 

PPWRの意図しない結果は他にもあります:

再利用品(リユース品)は、使用するたびに洗う必要があります。私たちのような業界にとって、これは水需要を、少数の使い捨て紙繊維包装製造拠点からヨーロッパ中のすべてのレストランに移すことになり、その多くは水不足が深刻な地域にあります。PPWRは、ヨーロッパの水インフラにさらなるストレスを与える可能性があります。

再利用可能なプラスチック包装の製造とその洗浄・輸送には、より多くのエネルギーも必要となり、その結果、温室効果ガスの排出量が増加します。カーニーの調査によると、2030年までに100%再利用可能なものへとシフトすることで、ダイニングインでは最大50%、テイクアウトでは最大260%も排出量が増加します。

 

これらのことから、私が再びブリュッセルを訪問した理由は、私たちIEOセクターの関係者が貴重な議論を喚起することができた為です。しかし、来年の選挙を控えて時間的なプレッシャーが高まる中、複雑な状況の解決策を急ぐことは問題を悪化させるだけであることを皆に思い起こさせることは、これまで以上に重要です。ヨーロッパは最大の難題を解決するために妥協してきた歴史があります。なぜなら、ヨーロッパの食品包装問題を解決するための特効薬は存在しないからです。