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欧州の炭素との戦い、国境税の導入で世界へ

(ブルームバーグ) -- 欧州連合(EU)は、気候変動に左右されない初の大陸を目指す動きを加速させている。

日曜日に施行される新政策は、世界の他の地域にも追随を促す第一歩となる。

 

この措置は、最終的に炭素集約的な輸入品に課税することで、欧州大陸の厳しい気候変動規制を遵守することを余儀なくされている欧州企業が、圏外の生産者との不公平な競争に直面しないようにするものである。いわゆる炭素国境調整メカニズムの第一段階が始まる日曜日から、炭素集約的な6産業の輸入業者は、その排出量について報告することが義務付けられる。

 

ボストン・コンサルティング・グループのシニア・エキスパートであるティム・フィギアーズ氏は、「これは世界中の企業にとって戦略的かつ財務的な意味を持つだろう」と語った。又「日曜日は長いプロセスの始まりに過ぎないが、たとえ一部の企業がすぐに影響を受けなかったとしても、EUにはさらに多くの産業を含めるオプションがあるため、後の段階で影響を受ける可能性がある」と述べた。

 

このメカニズムは、自由貿易の原則を損なうものだと主張するロシアや中国を含むEUの主要貿易相手国からの反発にすでに直面している。また、バイデン政権は今年初め、EUの鉄鋼とアルミニウムの輸出を除外するよう求めており、EUとアメリカの貿易摩擦にも拍車をかけている。

 

しかし、ひとたびこの仕組みが始まれば、地球温暖化防止の取り組みの一環として、カーボンプライシングを世界中で確立できるかどうかの重要な試金石となるだろう。2026年1月から開始される第2段階では、企業はEUの炭素市場の価格に合わせて段階的に賦課金を支払う必要がある。EUの指標となる排出権取引価格は、金曜日には炭素1トンあたり約82ユーロだった。

 

欧州の国境で排出量に価格をつけるというアイデアは、過去20年以上にわたって浮上してきたが、EUが野心的なグリーンパッケージの一環として課税を義務づける法律を採択したのは今年初めだった。EUは、この10年間で温室効果ガスを1990年比で少なくとも55%削減し、今世紀半ばまでに気候中立を達成するという拘束力のある目標を掲げている。

 

数値によれば、課税が実施される前の暫定的な段階である国境措置でさえ、輸出国の生産者は二酸化炭素排出量をより重視せざるを得なくなるという。

 

「第一に、排出量を削減しなければ、製品の競争力が低下する。第二に、EU域内で炭素の価格を支払うという見込みが、脱炭素化への投資のインセンティブとして働く。「炭素集約的な製品はEU市場で販売しにくくなるため、炭素関税のない第三国にシフトする可能性がある」。

 

商品が生産された国ですでに炭素税が支払われている場合、課税は少なくとも部分的に免除される。このような設計は、世界貿易機関(WTO)が策定した規制のもとで、この計画が違法な関税とみなされるのを防ぐものでもある。

 

EUは、加盟国におけるコンプライアンス監督の確保から、より詳細な技術的ルールの導入まで、この仕組みを円滑に運用する為にはまだ多くの課題を抱えている。また、WTOでの法的課題や貿易相手国との紛争にも直面することになる。

 

ベルギーの化学業界のロビー団体であるEssensciaのエネルギー・気候・経済担当ディレクターであるEls Brouwers氏は、このメカニズムを「EUの輸入業者にとって大きな事務的負担」と表現した。輸出がどのように保護されるのか企業は「多くの疑問」を抱いていると、Brouwers氏は述べた。

 

ノーベル賞受賞者のWilliam Nordhaus氏を含む環境学者や経済学者たちは、カーボンプライシングを長年提唱してきた。カーボンプライシングは、各国が「カーボンクラブ」のようなもので結束し、他国の努力に「ただ乗り」する問題を排除することができるからだ。ドイツは、7カ国グループ(G7)と並んで、このような連合体の構想を打ち出している。

 

ブルームバーグNEFの貿易・サプライチェーン部門責任者であるAntoine Vagneur-Jones氏によれば、これはまた、中国の排出権市場のように、他国で勃興しつつある炭素市場に勢いを与え、他国がこれに追随するように仕向ける可能性もあるという。

彼は「EUが行っているようなカーボンプライシングがすぐに実現することはないだろう。しかしカーボンプライシングが政治的に容認されているところでは、これは間違いなく推進力のような役割を果たすだろう」と語った。