INC-3(国連環境計画、プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会 第3セッション)
2023年11月、国連がナイロビで招集される委員会(INC-3)は、プラスチック汚染に終止符を打つための国際的かつ法的拘束力のある条約について議論します。
DigimarkのRiley McCormack社 社長兼最高経営責任者(CEO)が、参加者が留意すべき重要な要素について見解を述べます。
人類は存亡の危機に直面しています。現在の炭素排出量を減らさなければ、私たちは人が住める惑星を失い、消滅するでしょう。
この結果(人類の絶滅)の深刻さは、コストや労力に関係なく、インパクトある解決策を実施するよう私たちを駆り立てないといけません。我々に時間がないにも関わらず、それどころか、コストや労力を伴う解決策は言い訳であり、その言い訳が惰性につながります。
しかし、もし二酸化炭素排出量を有意義に削減できる技術があり、それがうまく機能し(徹底的にテストされてきています)、比較的少ない労力で採用でき(それは大掛かりな採用の初期段階にあります)、政府の補助金を必要とせず(実際それはマイナスコストである)、更に(プラスチックのリサイクルの質量共に向上させることによって)プラスチック汚染の問題にも対処できるとしたらどうでしょう?その時、私たちは何を言い訳にすればいいのでしょうか?
エレン・マッカーサー財団のこのインフォグラフィックは、風力発電や太陽光発電のような変革をもたらす二酸化炭素削減技術と同じように、より質の高いプラスチックリサイクルが二酸化炭素排出量の削減にもたらす影響が、政府がマイナスコストがかかる補助金を出す必要がないという事実を、明確に伝えているからです。
というのも、現在のプラスチック選別技術では、本来リサイクルされるべきプラスチック原料の全種類を検出できないばかりか、検出されるプラスチック原料を正確に選別する能力にも限界があるからです。これら2つの限界の結果として、バージン・プラスチックの使用が必要以上に増え、その結果、二酸化炭素排出量が必要以上に増えることになります。
プラスチックの全種類を検出できないことが、バージンプラスチックの使用量増加につながる理由は明白です。不正確な選別がバージンプラスチックの使用を増やす理由は2つあります。それは、利用可能なリサイクル原料の種類が限られてしまうことと、ベール純度を低下させリサイクル原料の品質を低下させることです。
幸いなことに、より高品質のプラスチック・リサイクルを行うために必要な次世代選別技術の準備は整っています。それは、業界の関係者によって徹底的にテストされ、初期段階ですが、実際、採用が始まっています。
それはデジタルマーキングと呼ばれるもので、包装に、関連する包装属性の拡張可能なデータベースにリンクする、検出が容易な機械可読コードを付加するものです。デジタルマーキングは、より多くの品目を検出できるようにし、リサイクル業者が選択する決定的基準でこれらの品目を選別できるようにすることにより、利用可能なリサイクル品の種類を増やし、各ベール純度を向上させることで、循環性を促進します。
しかしデジタルマーキングは、利用可能なリサイクル品の質量を即座に改善するだけでなく、プラスチック廃棄物の流れ自体に関するこれまでにないデータという、非常に価値のある副産物も生み出します。
データは、既知の問題を効率的に解決するだけでなく、存在すら知られていなかった問題の解決策を発見することもできます。すでに業界は、このデータを活用する複数の方法を構想しています(より効率的で効果的かつ公正な拡大生産者責任制度、より持続可能な包装設計、実際の賞味期限要件の発見による包装量の削減など)。
更に、データ分析の歴史は、データを分析するという長年の懸案であった旅に出ることにより、最終的な価値の量と方法を生み出すという点で、私たちがかすりもしなかった包装のデジタルマーキングをついに可能にしました。
欧州委員会(EC)は、Holy Grail Initiativesを通じ、デジタルマーキングの一種である電子透かしの威力を目の当たりにしました。その結果、包装および包装廃棄物規則の改正案に、包装のデジタルマーキングを要求する文言が盛り込まれました。ECは、デジタルマーキングが既存の選別作業改善から今日もたらす価値と、その驚くべき副産物であるデータが将来もたらす価値を理解しています。
現在、電子透かしの大規模な展開を始めている業界関係者も、この技術の多面的な利点を理解しており、我々は、欧州委員会と同様に、彼らのビジョンだけでなく、より重要な彼ら自身の行動に拍手を送りたいと思います。問題と解決策の間に立ちはだかる唯一のものが惰性を克服することであるとき、リーダーシップは「見る者」ではなく「実行する者」によって定義されます。
ナイロビでは、国連が招集した政府間交渉委員会(INC-3)の第3回会合が開催され、「プラスチックの全ライフサイクルに対応する包括的なアプローチ」で「プラスチック汚染を終わらせる」ための国際的かつ法的拘束力のある条約のZero Draftが議論されます。
私たちはINC-3の交渉担当者に対し、この歴史的な機会を捉え、条約にプラスチック包装のデジタルマーキングを義務付ける文言を採択するよう強く要請します。そうすることで、すでにZero Draftで説明されている数多くの目標を達成する手段を提供するだけでなく、ECの行動の影響、ひいてはデジタルマーキングの利点を欧州のみにとどまらないものにすることができます。これはグローバルな問題であり、解決策もグローバルでなければならなりません。
文字通り存亡の危機に対し、これほど強力で実績があり経済的に実行可能な解決策が用意されていることは前例がありません。また、世界的な普及を求めるには時間がないだけでなく、言い訳自体も尽きてしまいます。